写真:花壇の土を耕す女性

Interview

チーフガーデナー就任の想い

チーフガーデナーに就任された経緯と、改めての決意をお聞かせください。

2016年に知人の紹介で、北川村のモネの庭を運営する"きたがわジャルダン"に入社し、初めて造園に触れました。前任者に師事し、庭造りを学ぶ中で、「もっとやりたいことがあるのに忙しくてできない」と前任者が言っていたことがあり、「前任者がやりたいことができるように、今の仕事は一通りできるようになろう」という気持ちで取り組んできました。入社3年目には「責任者を任せたい」と言われるようになり、この度の就任となりました。

写真:木々の中で微笑む女性

「印象派クロード・モネの造った庭」という大きな看板を背負うプレッシャーはありますが、多くの方々に支えられています。ジヴェルニーの前責任者のジルベール・ヴァエ氏、現責任者のジャンマリー・アヴィザール氏、そして前任者。誰の話を聞いてもモネの庭への熱量は並々ならぬものがあり、それに負けない想いで庭造りに努めないと彼らに失礼だと思います。

常々「モネの精神」というフレーズを耳にしてきましたが、自分が正しく理解できているか、今なお模索の日々です。モネについての資料や絵画研究を怠らず、また植物の知識も更新し続け、変化する気候や環境に対応していく必要があります。考えることを諦めず、かつ気負いすぎることなく、庭造りを続けていきたいと思います。

モネの庭の魅力

町田さんが考える“北川村「モネの庭」マルモッタン”ならではの魅力をお聞かせください。

ジヴェルニーと同じ「モネの庭」を目指しながらも、咲いている草花や組み合わせが全く異なる点が面白いと思います。ジヴェルニーとの交流で同じ植物を育てることもありますが、気候の違いから、必ずしも同じように育つわけではありません。

フランス・ジヴェルニーとは全く異なる気候の高知県東部でモネの庭を造ることの難しさを、日々実感しています。植物の生長スピードや季節の移り変わりは特に早く、よそ見をすれば花が一気に咲き進んでしまいます。

春は早く訪れ、夏は猛暑、最近は秋も短くなるなど、気候変動の影響で思い通りにはいきませんが、北川村はジヴェルニーより寒さの訪れが遅いため、開園期間の11月末まで花を維持することができます。

高知の気候を活かして水の庭に青い睡蓮を咲かせ、ジヴェルニーでは実現できない「ボルディゲラの庭」という温暖な地中海の雰囲気も作り出すことができました。

全く異なる環境でありながら、クロード・モネの庭という同じ理想を掲げて庭造りをしていることが、私たちの大きな魅力だと考えています。

写真:青い睡蓮

2025年の注目ポイント

開園25周年を迎える来年度の見どころをお聞かせください。

25周年のために特別な準備をしているわけではありませんが、四半世紀をかけて成長してきた庭園そのものを見ていただきたいと思います。庭は造ってからが大切で、見応えのある庭に育つまでには数年を要します。2020年に完成した「ボルディゲラの庭」も、4年の時を経て、より自然な地中海庭園としての趣が深まってきました。

ジヴェルニーはモネが水の庭に着工してから130年近くが経ちます。25年目を迎える北川村の庭は、モネが80歳頃に見ていた庭の姿に近いのではないでしょうか。「モネが見ていた風景」に思いを馳せる、格好の機会となるはずです。

今後の目標

今後のモネの庭についてのビジョンをお聞かせください。

フランスと日本を繋ぐ架け橋として、"北川村「モネの庭」マルモッタン"を育んでいきたいと考えています。モネの庭の名を頂いた以上、日本におけるジヴェルニーのモネの庭の広報としての役割も担っています。フランスからのアドバイスを受けながら、より多くの日本の方々にモネの庭の魅力を感じていただけるよう努めてまいります。

誰がチーフガーデナーであっても、「クロード・モネの庭を造る」という明確な道筋があります。その軸からぶれることなく、しかし、モネ自身が新しい花を取り入れることを楽しんだように、私たちも新しいチャレンジを続けていきたいと思います。

写真:チューリップやポピーの咲く朝の庭

来園者へのメッセージ

最後に、来園者へのメッセージをお願いします。

「モネの庭」の世界観に浸れる場所は、世界でもジヴェルニーと北川村だけです。モネの絵画がお好きな方は、絵と庭を照らし合わせながら園内をお楽しみください。

モネの絵画の魅力は、光の表現にあります。晴れの日も曇りの日も、太陽の位置によって光の当たり方が変わり、同じ場所でも異なる表情を見せてくれます。庭でそのことを実感していただき、日常から少し離れて、緑と花と光の中で、ゆったりとした時間をお過ごしください。

写真:花の庭で微笑む女性